「表現のための文法」というのは,「表現する」=「書く」「話す」の両方を意味します。
前にも書きましたが,(大人用も含めて)日本の英語教育では,ごちゃ混ぜになっているのが現状だと思います。
「書く文法」と「話す文法」がこんなに違うのか,あるいは本で学んだ文法は会話ではこう使うのか,というのは,両方を実践した(している)人にしかわからないでしょう。
日本で英語をしょっちゅう「書く」仕事をしていても「話す」機会がほとんどない人は多いでしょう。
英語圏でしょっちゅう英語を「話す」機会があっても,英語をマジメに「書く」機会はほとんどないでしょう。
どちらの立場の人も,残念ながら,自ら努力して機会をもたないと,両方の分野に長けているとは言えません。
「話す文法」の例として,助動詞(推量)を挙げてみようと思いました。
〈can't [cannot]+動詞の原形〉 「~はずがない」
正式な文(書き言葉): It can't be true. 「それは本当のはずがない」
話し言葉: It can't be! 「そんなバカな!」
カタカナ表記はよくないですが,敢えて書くなら,発音は「イッ キャンビ!」で,「キャン」が強く発音されます。
そして,このようにひと言で応答するとき,確信度によって使う助動詞を変えるだけです。
「そうに違いない」と確信しているとき。
It must be. [Must be.]
「恐らくそうだ」と思ったとき。
It should be. [Should be.]
あり得ないと思ったとき。
It can't be. [Can't be.]
このように書いていくと,馴染みのある1語が頭に思い浮かぶと思います。
Maybe.
この語の存在があるから,文頭の It さえ省略されて,
Can't be. / Must be. / Should be. / Could be. / Might be. . . .
のようになる[聞こえる]のかも知れませんね。
さて,これらの応答(会話表現)は学校では習いません。
あくまでIt must be true.のような「主語+動詞~」が基本です。
理由の一つは,主語や補語の省略とか,くだけた言い方では・・・などと言い出すと,生徒は混乱するだけだからでしょう。
ですが,個人的には,書き言葉用の基本文法をしっかり学んでいれば,会話は慣れなので,実際に話す必要性が出たときに十分基本文法は生かせると思います。(実体験が物語る…)
重要なことは,学ぶ際,教える際に,「書く」と「話す」が全然違うこと認識しているかどうかだと思います。
そもそも,前々から,「会話文を読む」ことに異議があるわたくしです。
実際の「会話」を文字で表すことは不可能に近いからです。
勝手な憶測ですが,昔は英語の試験にリスニングがなかった=筆記しかなかった→対話文は筆記(読解問題)で扱われた→リスニングがメジャーとなった今でも対話文読解が残っている。
英語圏が作成する英語の試験に対話文読解などあるでしょうか・・・?
もちろん,会話の内容を理解する,正しい応答を選ぶ,などの設問形式はそれ相応に意味があるのも確かなのですが,不自然な会話を「読む」たびに,思うところがあります。
少なくとも,英語を「読む」学習のときは,しっかりした基本文法で書かれた英文を,英語を「聞く」学習のときは,英文法や構文などにこだわらず,限りなく生に近い会話をひたすら聞くのが理想だと思います。
重要な部分以外は聞き流してよく,何が省略されているとか冠詞がどうだったとか重要ではなく,会話の主旨を聞き取る練習ですね。
まあ,理想は理想に終わるのですが・・・。
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