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From New Zealand 2007年7月,ニュージーランドへ移住してきました。ニュージーランドでの日常生活についてつづります。

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リスニング問題作成は筆記問題作成よりも深い

高校入試やセンター試験にリスニング問題が出現したのもそれほど遠い昔のことではありません。

「問題作成」を本業としているわたくしですが,リスニング問題の作成は文法問題や読解問題などの筆記問題以上に深いものだと思っています。

日本の学校英語(一般書は別です)のリスニング台本,設問,及び解説を見る限り,英語表現の理解に焦点がとどまっていて,リスニング本来の特徴である「音」には大して重きが置かれていない気がします。
言い換えれば,例えば,リスニングの対話文問題と筆記の対話文読解に大きな差がないと言いますか。

「ああ,この問題は,本当に『聞き取る』」ことを試しているな」という良問にはなかなか出会えません。


自分の作問力は棚に上げることとして…,例えば,以下のようなテクニックはどれだけの執筆者が意識して作問しているだろうか。

1.単語レベルで,sweaterやpizza,T-shirt,boxes, teaches,過去形read,lives,などなど,筆記の発音・アクセント問題の対象になりがちな単語を積極的に使う。
・・・実際に(偶然に)使われていても,「sweaterは『セーター』。」という解説があっても「sweater [xxx]の発音を確認しよう」みたいな解説に出会えない。


2.リスニングが読解問題と大きく異なる点は,自由に後戻りできないこと。高校入試や英検4,3級など,放送はたいがい2回くり返されますが,前から順に理解するのがリスニングの特徴です。
そこに焦点を当てた作問テクニックの一つに,指示語があると思います。

例えばスピーチの設定で,

...  That is my dream. ...
Q: What is Ken's dream?

とあれば,Thatの内容はその前の部分にあります。
(ちなみに,あとの内容を指すことができるのはthisのみです)
1回目の放送では質問内容はわからないわけですかから,What is Ken's dream?という質問を聞き取ったあと,2回目の放送で,That is my dream.の「前」の部分をよく聞く,もしくは再確認しないといけないわけです。

これを,スピーチ冒頭で

Today, I'll tell you about my dream. ...

と始めると,以下の内容をよく聞くことになり,また違った意図になります。

3.接続詞も面白いポイントです。
だいぶはしょりますが,

Q Why is Ken tired?
に対して,
... I'm tired because I studied hard last night. ...

... I studied hard last night, so I'm tired. ...

A: You look tired. Are you OK?
B: Well, I studied hard last night. ...

など,いろんな攻め方があります。


4.対話文ではどれほど自然な会話にするか。
例えば,短縮形がその一つです。
会話では,I willはI'll,I am Ken.ではなく,I'm Ken.なのですね。

ちなみに,東書の1年p.10を見てみます。
「基本文」は確かにI am Emi.となっています。
でも,本文会話中ではI'm Emi.になっています。

指導書にも書いてあるのですが,文の構造を分析的に説明しやすくするため,便宜上,I am Emi.と表記しているだけで,発話ではI'm Emi.が普通なのです。
なので,基本文としてはI am Emi.でいいのですが,これが会話中,スピーチ中で使われるのはおかしいのです。

そういう大事な点が教科書にひと言あれば・・・と願うのはわたしだけではなかろう。
指導書では文末に,「『話す』活動においては,縮約形を使った言い方を主に指導したい」とある。

ちなみに,会話文中で,shouldn'tが未習なのでshould notとしなければならないストレスを,どれほどの人が感じているだろうか。

短縮形については,リスニングだけでなく,筆記の英文にも当てはまります。

文法問題集などのwillの単元はオエオエなります(笑)。
OK.  I'll see you then.
なのであって,
OK.  I will see you then.
ではないのです。

I will not meet my friend. といった英語は本当はおかしいのです。
「何が何でも友人には会わないぞ!」みたいな。

あくまで,基本文や文法確認の部分でとどめたいものです・・・。


解説に戻りますが,解説できる文字量が限られているという現状は確かにあるけれど,

「ケンは・・・と言っている。」
「・・・の部分をよく聞き取ろう。」

といった,放送本文を引用するだけの解説が多い。
手がかりとなる箇所を提示するのは確かに解説として最重要です。
しかし,「聞き取り」の意図がわかるような解説,発音記号やアクセントの観点を交えた解説に出会えないのはなぜでしょうか。

例えば,
「livesはlifeの過去形。」
という解説は筆記問題の域を超えていない。
そこにlivesの発音記号を入れるだけで,だいぶリスニング問題らしくなる気がする。

本文に故意に過去形readとredを使用して,
「readとredの発音もポイント。」
なんて解説に出会えたら感動するかも知れない。

単語レベルでなく,発話バランス,コロケーション,語呂など言い出すともっと深いです。
わたし自身,まだまだ「リスニングの良問とは?」に模索中ですが,少なくとも,ナレーターが発話しやすい文章を意識しています。

かつて,台本で「A, B, and C」という調子を使ったときに,編集者さんにバランスを崩されたことがあります。
そのとき,ふと感じました。

リスニングはリーディングじゃないのだと。
ナレーターになった気分で,実際に発話してみなければ,と。

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