英語教材作成に関わり十余年,英語圏に移住して二年半。
学校の英語教育と実際の場面でのギャップもしかり,読む,書く,聞く,話すがまぜこぜになっている英語学習に違和感を持ち始めました。
そんななか,自分は今後どんな路線でアプローチしていくのか。
日々見えてきている気がします。長期戦ですね。
まず,ギャップの面で,例は山ほどありますが,単純なところで…。
中学1年の教科書でhelloを習いますが,発音記号は[helou]のoにアクセントです。
しかし!
実際は,会ったときのあいさつでは[helou]のeに「強烈に」アクセントをつけた発音が圧倒的に多い。
女性に多いかなあ。
敢えて訳すなら「げぇんき~~?」みたいな感じ?
教科書会社6社のうちeにアクセントがある発音記号を併記しているのは1社のみ(教出)です。
ちなみにボストン在住の方のブログでも同じエピソード見つけた!(嘘ばっかり教えやがって!みたいな(笑))
(幸い,昨今はALTなどいるので,こういったトラブル?はめっきり少ないかも知れませんが,その表記だけを頼りにアクセントの問題を作る人がいるのが現実である)
次に,口語と文語がまぜこぜになっている世間一般の文法書に違和感を抱き始めた。
たまたま自分も文法書を執筆中で,その域を超えられていないのですが,日本のマス一般向け文法書では,読解オンリーのアプローチ,または読解用+ライティング用,さらには会話までが入り交じっています。
実際,学校英語も含め,ノンネイティブ用に文法を網羅させるにはどうしてもこうなってしまうでしょう。
しかし,会話の機会が増えていくと,もう一歩進んだところで発見があります。
例えば,一般的な文法書では以下のような図式が典型的です。
<上から順に口語体→文語体>
1.This is the country she was born in.
2.This is the country which [that] she was born in.
3.This is the country in which she was born.(※in thatは不可)
学習者は,下記のようなルールを聞かされているはずです。
・目的格の関係代名詞は口語ではよく省略される。
・「前置詞+関係詞」は文章体で,口語では前置詞は文の最後がふつう。
しかし!
なぜそうなのかは書かれていません。
理由は,実際に会話をこなしている人にだけわかるかもしれません。
普通に会話しているときは1(または2)が多くなる。
なんで?
話しているときはbornまで言わないと(考えないと)inが出てこないからです。
そうです。
話すときは後戻りしないのです。
書くときは,1文全体を前もって考えている場合が多く,born inのinをあらかじめ前に持ってくるということが容易に可能です。
しかし,話しているときは,This is the country sheまで言って,そのあとwas born inではなく,is fromと言うかもしれないわけです。
学習者はここまで知る必要はないから本には書かれていないのでしょうか。
でも,機械的にルールを覚えるよりもイメージがわくはず。
わたし自身,実際に会話に慣れれば慣れるほど(スピードはめっちゃ遅いですが!),日本人からの指摘で
「お主,英語で会話をしていないでしょう」
と思わざるを得ないものが引っかかり始めたのは事実です。
今までの知識・経験に現場の経験をプラスしていく。
それが使命であり,実際アイデアはどんどん出てくる。
今後,どういった観点で外から日本を見ていくのか。
自分の英語力の上達ももちろん楽しみです。
移住して二年半,平日はほぼPCの前で孤独に仕事をしているという前提で自己判断をしてみる。
発話力(スピーキング力)としては,言いたいことは大抵言えている。
聞き返されたり誤解されることもあまりない。
なぜなら四六時中英文を書いている(アウトプットしている)から。
書き言葉を発話している可能性はありますが(笑)。
IELTSのスピーキングも教えているHさんに最近改めて聞いたところ,
決して流暢とは言えないが,(文法・語法的に)正確な英語を話している,話しながら間違いを自分で発見して言い直している,単語がわからなければ簡単な表現でまかなっている,などの点で評価をもらった。
語い力は全然足りない・・・(ある意味致命的)
一方,リスニング力では全く満足していない。
リスニングが伸びないので「会話力」が伸びない。
「スピーキング(発話)」と「会話」は別です。
会話はキャッチボールであり,相手の言うことが聞き取れないかぎり,発話のチャンスは与えられません。
相手の言うことが聞き取れないかぎり,会話は成り立ちません。
自分のことを延々と話すことはできても,それではキャッチボールにならない。
スピーキングだけできてもリスニングができなければ「会話」はできないままです。
まあ,わたしのタイプは珍しいのかも知れないですが(普通は逆で,聞き取れるが話せない?),何が言いたいかというと,
自分は英語教育の仕事を始めたときにすでに英語ができすぎていた人間ではないこと。
よって,自分自身が経験したこと,これから乗り越える方法を,教材に盛り込んでいく,そんな感じになりつつあります。
長文失礼しました。
PR