よい機会なのでもう一つ挙げたいと思います。
前回の「許可と依頼」の」記事で,
「文法の用法を区分けするのが大事なのではない」
と追記させていただきました(汗)。
同じことが現在完了にもあてはまります。
現在完了を「継続」「経験」「完了」「結果」のような用法に分けるのは,私たちがノンネイティブだからであって,あるいは,これが日本の英語教育での伝統的な教え方なのであって,実は母国話者の人たちはこんな区分けをしません。
ちょっと不都合なのは,用法間の差が微妙なことがあることです。
確か過去にも挙げたこの例。
Have you been to [tried] the new restaurant by the station?
は,「新しいレストランに行ったことがある?」なのか,「もう行った?」なのか。
この場合,newが若干のポイントになるわけですが,仮に会話でこう言うとほぼ後者のニュアンスです(yetはあまりつきません)。
文法的に経験か完了かを議論する価値のないパターンです。
どの用法かなどと考えずとも,「過去から今までの間に行ったのか行かなかったのか」が理解できれば,十分です。
このタイプは,文脈がなければ正しい訳を書くことの必要性もありません。
また,追記に英語は数学のようにA=B, B=Aではないとも書きました。
こんな例はどうか。
「経験用法」と一緒に使われる語句として,たいていonce, twice, many timesが挙げられます。
では,We've changed the plan many times. はどうなのか。
「計画を何度も変更したことがある」ではなく「(これまでに)何度も変更した」のはずです。
このように,A=Bという式が不都合を生むことを知っておかなければなりません。
今回は現在完了について触れましたが,指導書にも,「英語教育では,伝統的に現在完了の意味を分けて考えるが,基本は1つ。混乱を避けるためにこの分類をとっているが,この分け方は文脈に応じた訳し方の問題であって,英語そのものの問題ではない。…」というような記述があります。
まさにこの通りで,訳についても,「文脈に応じた」というのが大事だと思います。
文法教材などでは,文脈がないために確かにいろんな意味にもできるわけですが,最も自然な英文と最も自然な訳,双方がぴったり合う(ほかの意味の可能性はない)セットの例文を使いたい,というのがわたしのこだわりです。
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